住まいと健康〜体がよろこぶ自然素材を多く使った家づくり〜
家づくりにおいて、「どんな素材を使うか」は、見た目やデザインだけでなく、そこで暮らす人の健康や快適さに深く関わる大切な要素です。
たとえば、自然素材を使った住まいは、化学物質に過剰にさらされることがなく、空気が澄んでいて、四季を通して心地よい空間をつくり出します。
木や土、紙や石など、昔から身近にあった素材には、人の身体になじむ優しさと、環境に寄り添う持続可能な魅力があります。
現代の住宅では、利便性やコストを優先するあまり、化学的な建材や仕上げ材が多く使われる傾向があります。
しかし、毎日長い時間を過ごす「住まい」だからこそ、素材選びを丁寧に考えることが、家族の健康と安心、安全な暮らしにつながります。
なぜ家づくりに自然素材が必要なのか、その理由と魅力をくわしく解説していきます。
長く暮らす家だから、安心できるものを
ドクターズホームでは、住まいづくりに使用する素材が心身にどのような影響を及ぼすのかをふまえ、専門的なアドバイスを行いながら一つひとつ丁寧に選定していきます。

素材に対する技術は日々進歩していますが、「人の体に近い素材こそが、心身の健康によい素材である」という基本は変わりません。
たとえば、土・木・紙・レンガといった有機的な自然素材は、長く使い続けることができ、最終的には自然に還っていく循環型の素材です。
これに対し、化学製品は分解までに長い時間を要し、体内に取り込まれた場合も浄化しにくいという特徴があります。
そのため、ドクターズホームでは、有害な化学物質を発生するとされる新建材の使用はおすすめしていません。
自然素材を使用することで、室内の空気環境にもよい影響が生まれます。
建材や内装に自然素材を取り入れると空気がマイナスイオン化し、ホコリや花粉、ニオイなどを吸着・分解しやすくなり、空気の浄化にも役立ちます。
特に、建材を覆う塗料には有害な化学物質が含まれているケースが多く、注意が必要です。
ドクターズホームでは、マイナスイオンを増やして生体エネルギーを高める効果が期待できる「AIリキッド」という液体を塗布し、室内をマイナスイオン優位の環境に整えることもおすすめしています。これにより、有害化学物質を分解・除去することが可能です。
万が一、家具やカーペット、衣類などから有害物質が持ち込まれた場合でも、その害を抑制するよう配慮しています。
家は、一日の大半を過ごすもっとも身近な空間です。
価格だけで素材を判断するのではなく、「その素材が心身にどのような影響を与えるか」という視点を持ち、丁寧に選んでいくことが健康的な住まいづくりの第一歩となります。
木は“呼吸”している ─ 快適な空気と温もりを生む素材の力
木材には、私たちの暮らしを快適に保つための優れた「調湿機能」が備わっています。
湿度が高いときには空気中の水分を吸収し、乾燥しているときには蓄えた水分を放出して、室内の湿度を自然に整えてくれるのです。
まるで呼吸をするかのように、木は生き続けています。
この調湿効果が、健康にも良い影響を与えることが分かっています。
ある調査によると、鉄筋コンクリート造の校舎に比べ、木造校舎ではインフルエンザによる学級閉鎖の割合が約3分の1に抑えられていました。
インフルエンザウイルスは低温・乾燥した環境で長く生存するため、木の調湿効果により空気の乾燥を防ぐことで、ウイルスの蔓延を抑制したと考えられています。
また、木材は断熱性にも優れており、熱を適度に蓄えるため、室温に自然となじむ特徴があります。
この性質によって、木の空間は冬はほんのりと暖かく、夏は過ごしやすい環境が保たれます。
私たちが木に触れたときに感じる「やさしくあたたかなぬくもり」は、この断熱性と蓄熱性によるものです。
さらに、木造校舎と鉄筋コンクリート造の校舎で、子どもたちの「疲労度」と「集中力」を比較した実験では、木造校舎の方がよい結果が得られています。
木の空間は、子どもたちのストレスを和らげ、授業中の集中力を高める効果があるとされています。
木に触れたり、木の香りを感じると、心が自然と落ち着き、副交感神経が優位になってリラックス効果が得られます。
木のもつ調湿性・断熱性・心理的な安らぎは、私たちの暮らしや健康に欠かせない大切な要素といえるでしょう。

「体に良くないものは使わない」─安心の家づくりが基本
壁や天井に使用する素材には、ビニールクロス、紙クロス、漆喰、塗り壁など、さまざまな種類があります。これらの素材を選ぶ際には、湿度を適切に調整できること、そして有害な化学物質を発生させない・燃やしても有害物質が出ない素材であることが、とても重要なポイントです。
一方で、化学物質を多く含む素材を使用すると、シックハウス症候群や化学物質過敏症、アレルギーなどの健康被害を引き起こす可能性があります。
毎日長い時間を過ごす住まいだからこそ、素材への配慮は欠かせません。
健康への影響を考慮したうえで、安心できる室内環境を整えることが大切です。
自然素材を使った塗り壁にも、さまざまな種類があります。
それぞれに特徴や性能があり、吸放湿性能・消臭性・安全性・防菌・抗菌性能・防火機能など、素材によって大きく異なります。
見た目や質感だけでなく、性能面を比較・検討しながら、自分たちの暮らしに合った素材を選ぶことが重要です。
足元から空気まで。心地よさをつくる素材たち

■無垢材の床
無垢材の床は、素足で歩いたときのやさしい足触りが魅力です。湿度が高くなる夏にはさらりとした質感でべたつきを感じにくく、冬にはほんのりとした温もりが足元に伝わります。
季節を通じて快適に過ごすことができ、時間とともに深みのある色合いや風合いが増していくのも楽しみのひとつです。
木の呼吸や香りも、住まいに自然のぬくもりをもたらしてくれます。
■漆喰や珪藻土の壁
漆喰や珪藻土は、湿度に応じて空気中の水分を吸収・放出する調湿機能を持ち、室内の湿度を自然に整えてくれます。そのため、カビや結露の発生を抑え、健やかな空気環境を保つ効果があります。
さらに高い耐久性を備えているため、長く美しさを保てるのも魅力です。
塗り壁ならではの柔らかな風合いや質感は、空間全体をやさしく包み込むような心地よさを演出します。
■断熱材セルロースファイバー
セルロースファイバーは、新聞紙などを原料とした自然素材の断熱材です。優れた断熱性能により、夏は涼しく冬は暖かい室内環境をつくり出します。
また、調湿性にも優れているため、壁内の結露やカビの発生を防ぎ、建物の耐久性向上にもつながります。
リサイクル資源を活用した環境負荷の少ない素材で、快適性とエコロジーを両立できるのが大きな特徴です。

壁の中の“水の動き”が、住まいを変える ─ ヴェイパードライブとは
「ヴェイパードライブ(Vapor Drive)」という言葉があります。
「ヴェイパー」“Vapor”は「空気中の水分」、そして「ドライブ」“Drive”は「その動き」という意味です。つまりヴェイパードライブとは、空気中の水分が物理的なルールに従って建物の中を移動していく現象のことです。
空気中の水分は、次の2つの原則にしたがって必ず移動します。
1. 湿度の高い場所から、湿度の低い場所で移動する
2. 温度の高い場所から、温度の低い場所で移動する
この水分は常に移動を続け、決して同じ場所にとどまりません。
例えばレンガは透湿性が高く、いくら時間がかかっても水分を通過させます。レンガを通り抜けた水分は木にぶつかりますが、木も水を通す性質があるため、さらに奥へと進みます。
そして“通さないもの”にぶつかるまで、空気中の水分は湿度・温度の低い方向へ移動し続けるのです。
では、その「通さないもの」とは何でしょうか。
代表的なものがプラスチックです。そして、プラスチック素材でできているのが一般的なビニールクロスです。ビニールクロスや化学接着剤を使用した壁材は、水分の通り道を遮ってしまいます。
その結果、水分がその箇所で滞留し、カビの発生や壁内部の劣化を招く原因となるのです。

一方、木は呼吸する素材であり、ある程度水分を通す性質を持っています。湿気を自然に通すことで、内部に水分が滞ることがなく、カビの繁殖を防ぐ環境をつくります。
見えない空気中の水分の“動き”を理解することは、建物の耐久性や空気環境、そして健康的な住まいづくりにおいて非常に重要な視点です。
足元の冷たさ・硬さがもたらす意外な健康リスク
隙間風が吹き込むような寒い住まいや、冬に足元がひんやりと冷たい家は、私たちの心と体に大きな負担をかけます。身体が冷えるとストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増え、イライラや集中力の低下、思考力の鈍化を招いてしまいます。
特に、床が硬い・冷たいという環境は、腎機能の低下や膝への負担につながり、痛みやストレスを増大させる要因となります。
毛細血管は心臓のポンプの力が直接届かない末端に位置しており、筋肉の収縮によって血液循環を支えています。
しかし、足腰が冷えると筋肉がうまく働かず、このポンプ機能が低下。結果として血流が滞り、足腰の老化が進行し、さらには脳細胞の老化にも影響を及ぼします。
脳の奥にある脳幹は、姿勢を維持する抗重力筋を支配し、覚醒と睡眠のリズムを司る重要な中枢です。
床が冷たく固い環境では筋肉の働きが低下し、姿勢も崩れやすくなります。それにより脳幹の働きが弱まり、全身の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、冷たく硬い床は歩行姿勢を悪化させ、足の血液循環を妨げることで、イライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりといった感情面の変化を引き起こすこともあります。
こうした状態が長く続くと、老化の進行を早め、アルツハイマー病などのリスクにもつながりかねません。
健康的な暮らしのためには、ひざへの衝撃が少なく、冷えを防ぐ素材を選ぶことが重要です。
快適な床環境は、単なる住み心地の向上だけでなく、体と脳、心の健康を守るための大切な要素といえるでしょう。
五感にやさしい、心地よい素材選び
寝室の床に絨毯を敷くことで、足元の冷えを防ぐだけでなく、脳の働きを活性化する効果が期待できます。冷えを感じにくい環境は、睡眠の質や日中の集中力にも良い影響を与えます。
肌ざわりのよい絨毯やソファ、質感のある珪藻土や漆喰の壁、表面がでこぼことしたレンガの外壁、木製の家具──これらはすべて、人の感覚を心地よく刺激し、脳を活性化させる要素となります。
視覚だけでなく、触感や質感を通して五感に働きかける素材は、心身にやすらぎと安心感を与えてくれます。
床や階段には、適度な衝撃吸収性のある素材を選ぶことがおすすめです。
階段には、踏み外したときにも安全性を高め、衝撃をやわらげる絨毯を貼るとよいでしょう。
こうした配慮は、成長期の子どもや高齢の方、日々の家事をこなす大人にとっても、足腰への負担を減らす効果があります。
長い時間を過ごす住まいだからこそ、身体にやさしい素材を選ぶことが大切です。
一方で、見た目にも冷たく硬い印象を与える素材は、無意識のうちに緊張感を生み、リラックスしにくい環境になってしまうことがあります。
住まいの心地よさは、見た目のデザインだけではなく、触ったときの感触や素材が持つぬくもりによっても大きく左右されます。
日々の暮らしの中で、自然と安心感を与えてくれる“心地よい素材感”を意識して選ぶことが、快適な空間づくりにつながります。
まとめ
さあ、あなたが望む心身によい素材は、どのようなものですか?
安心できる素材を使って住環境を整えることが、家族を守る家になります。
ドクターズホームでは、家族が円満に健康で幸せに安心・安全に暮らせる、しあわせになれる家を創り続けています。
これから土地の購入、住宅、マンションの新築、リフォーム、リノベーションをご計画の方に、ドクターズホームではより詳しくお伝えするために対面、オンラインどちらでもご相談承ります。
お気軽にお問い合わせください。
〈筆者プロフィール〉

長谷川仁龍
住まいのトータルコンサルタント
株式会社ドクターズホーム代表取締役
(一社)国際風水科学協会 副理事長
(一社)日本建築医学協会 副理事長
NPO法人日本自然素材研究開発協議会 理事
シンガポール国立大学 LKY公共政策大学院地政学プログラム修了
松永修岳大阿闍梨のもと、様々な加行を経て、伝法灌頂を授かる
東京都吉祥寺にて前の歌舞伎座を手掛けた棟梁に大工として師事
神社・仏閣・お茶室・一般住宅・RC造・鉄骨造・防音工事など、幅広く教えを乞う
23歳で仁・幸夢店を設立、建築業を開始
33歳の時余命を宣告され、真の健康住宅の必要性を感じる
高性能・風水、建築医学、最先端の知識を活用し、住む人々が財・体・心の健康を整え、豊かな人生が歩める住まい創りのプロデュースを行う
【主な著書】
『しあわせを育む風水健康と幸運を呼ぶ 家づくりの秘訣』
『しあわせになれる200年 健康エコエネルギーの家』
『家族が幸せになれるほんとうにいい家』
『100年長持ちするレンガ積みの家の秘密』
(以上、エール出版社)