住まいと健康 〜音の影響〜
騒音は日々の生活の中で、私たちの健康に様々な被害や悪影響を及ぼす可能性があります。
騒音の大きさや種類、暴露時間によって影響の程度は異なりますが、騒音に対して、適切な対策を講じることが重要です。
静かで穏やかな暮らしを実現するために知っておくべきこと。住まいと音の問題、防音や遮音の対策など、住まいのコンサルタントが詳しく解説いたします。
騒音の種類と健康被害
高周波音
人によっては不快に感じるモスキート音(高い周波数の音)などは、ストレスや不眠、頭痛などの原因になります。
低周波音
工場や給湯器などから発生する音は、不眠、圧迫感、頭痛、しびれなどの症状を引き起こす可能性があります。
騒音全般
大きな音や、繰り返される騒音は、ストレスを蓄積し、心臓病や精神疾患のリスクを高め可能性があります。
1.生理的な影響
音は人間のホルモンの分泌にいつも影響を与えています。
呼吸、心拍数、脳波にも、心地いい音も同様の作用があります。「1/fゆらぎ」と呼ばれる、自然界の音やそれに近いリズムは、リラックス効果を高め、α波を誘発すると言われています。
波の音は、1分間に12回で、たいていの人は癒されると感じます。1分間に12回は、人が寝ているときの呼吸のサイクルとほとんど同じです。休んでいる時を思わせ、ストレスのない休暇中も思い起こさせます。
主に、聴力障害、睡眠障害、高血圧、心臓病、その他にも、頭痛、吐き気、めまい、肩こり、手足のしびれなど、生理的な影響が考えられます。
2.心理的な影響
人の感情にもっとも大きな影響を与えるのは音楽です。
自然にある音も、人の感情を左右します。鳥のさえずりを聞くと、安心感が生まれます。人は何千年にも渡り、鳥がさえずっているときは、平和だと、学んだからです。鳥の声が聞こえないとちょっと不安になったりするものです。
集中力低下、不安、イライラ、不眠、うつ病など、心理的な影響が考えられます。
3.認知への影響
人が音の情報を処理する帯域幅(たいいきはば)は狭いので、ノイズの中(オフィスの音)では、極端に生産性が下がってしまいます。オープンオフィスで働くと、静かな部屋で仕事をするのに比べて、生産性が3分の1、落ちるといわれています。
騒がしいところで仕事をしなければならない時は、鳥の声など心地のよい音をヘッドフォンで聞きながら作業するとよいでしょう。騒音の中でやる仕事の生産性が、3倍上昇します。
4.行動への影響
人は、不快な音は避けて、心地いい音のほうに向かうものです。いつも不快な音を聞かなければならない方は、健康を大きく害してしまいます。
小売店で流してる音楽の多くは攻撃的で、これは売上に大きな影響を与えます。音のせいで、売上の30%を失ってしまうともいわれています。
好きな音楽は心を癒すものですが、その反対に騒音はストレスを溜めてしまいます。これは誰しも経験あることではないでしょうか。
外の音が気になって仕事がはかどらないこと、眠れないこと、家族内でも騒音が火種となって毎年数々の事件が引き起こされています。音は空間に留まるものではなく、飛び越えて他人に影響を与えます。
遮音性・吸音は住環境においてのストレス防止
自動車や近所迷惑な騒音は、住む人のストレスや近所付き合いのトラブルのもとになりかねません。
家の中では40デシベル前後が理想的といわれています。
そんな静かで安らかな住環境を維持するためには、気密性が鍵となります。
遮音性=気密性といっても過言ではありません。
高気密住宅にするためには、それなりの施工方法があり、断熱材やサッシの性能も重要なポイントとなります。
また、昔の住まいは藁、萱、障子、襖、土壁、土間、畳、板、柱、どこにも反響材はありませんでしたが、現代の住まいは、鉄、非鉄金属、コンクリート、ガラス、プラスチック、ビニール、石膏ボード、どこにも吸音材が存在しませんので、防音(吸音、遮音)施工も重要です。
住まいの外で鳴り響く音だけでなく、住まいの中の生活音の対策も重要です。
遮音・吸音に優れた素材を使用した高性能住宅が音のストレスを防止すると考えます。
音は硬い材質のものほど、早く伝達します。例えば鉄やコンクリートで造られた長い管の端から声を出したことはありませんか?
かなりの距離があったとしても、反対側まで直接音は響き渡るでしょう。
家の反響も同じことです。
吸音性にすぐれた素材は柔らかく、音が伝わりにくいことが特徴です。
特に断熱材のセルロースファイバーは、遮音性にも優れています。間仕切りや階間にも施工することで、例えば2階でお子様が大きな音で音楽を聞いていても、1階や隣の部屋への伝達は半減し、トラブルを回避することができます。
家族や夫婦が円満であるために、遮音性、吸音性を重視した家づくりを行いましょう。
例えば、池に石を投げ込むと波紋が広がり、いくつかの波が水の高い、低いをつくり徐々に消えていきます。音の場合は空気圧を高くしたり低くしたりして、空気の疎密を作り出し振動させる、これが音です。
防音施工の方法
100ミリの壁であれば、100ミリの新聞紙をぎっしり押し込んだものをイメージしてください。
セルロースファイバーを100ミリの厚みで押し込むと1平方メートルに約5キロ~7キロを使用します。グラスウールでは約1キロ、ウレタンでは200グラムに満たないのです。
そこに吸音と遮音が同時に働くという原理があり、防音施工の根幹は、重さが必要であり隙間を作らないことが重要になります。
昔の家は、藁、萱、障子、襖、土壁、土間、畳、板、柱、どこにも反響材はなく、無駄な音をほぼ消した素材であり、それが安らぎを得る住まい環境をつくり、心を癒やします。
今、建てられている家は、鉄、非鉄金属、コンクリート。ガラス、プラスチック、ビニール、石膏ボード、どこにも吸音材が存在しません。
生活空間において音は重要な存在です。
セルロースファイバーがとても防音において優れているのは、セルロースファイバーを100ミリの壁に7キログラム/㎡に入れるとすれば、グラスウール(GW)の場合、1キログラム/㎡です。GW では100ミリ7枚を圧縮して入れなければ、同等の重量にならないし、防音にはならないはずです。
なぜかと言えば、グラスウールなどは細いガラスの棒が重なっていて、その間にある空気が断熱性を保っている、その空気層をつぶしたのでは断熱性はなくなります。GWでは重量を得ることができないのです。防音は吸音と遮音が必要で、遮音はイコール重さと訳せるほどの意義があるのです。
「防音の階級」試案
集合住宅の適用等級

※D値とは、空中を伝播する音であり、大きい数字ほど遮音がよい。
※L値とは、衝撃音を表し、小さい数字ほど遮音がよい。
聞こえる範囲の周波数
人が音を感じる範囲は30~2000ヘルツ(Hz)とも言われるが、感度のよい人で17000ヘルツくらいだと聞きます。NHKの時報のポッポッポッが440ヘルツ、ポーンが880ヘルツ。500ヘルツから上を高音、100ヘルツくらいを低温としています。
【デシベル(dB)】
音の大きさを数字で表したもの。音の強さを表す単位で、500ヘルツは50デシベルなどと表す。
例えば、アパートなどで隣の話し声がそっくり聞こえるようであれば20デシベル、音はしているようだが気にならない、45デシベルなどと表す。公団の基準は45になっています。
【ホーン】
騒音の単位として設定された。デシベルで表すより直接的。
デシベルの反対に数字の高いほど大きい音になります。
騒音と許容レベル


音の種類
①遮音
文字通り音を遮断することです。
コンクリートやガラスは空気も水も通さない。なのに「音」は何のこともなく反対側に明瞭に聞こえます。これは絶対的な厚みがないので、それらの建材自体がスピーカーのコーン紙のように振動して、反対側に伝えてしまうからです。
音は空気圧の振動であるから絶対的な力でこの振動を止めれば、音は聞こえなくなります。
その力を重さと表現を換えるとわかります。鉛、コンクリート、ゴム、鉄などの比重の重いものがよいのです。文字通り音を遮る物で、遮音はイコール重量とも訳せます。
重さの単位は水を基準としています。水1㎥は1トン。
②吸音
音が繊維のような(多気孔の)物の中に入ると繊維と繊維が激しく振動して摩擦を起こし、このことによって、「音の振幅エネルギーが摩擦の熱エネルギーに転換される」。
高音部ほど繊維が激しく振動して減音が著しくなります。私たちがマスクをして喋っているだけで、語尾がはっきりしなくなります。布団を被って叫んでみても聞こえない、これは摩擦熱に切り替わったのです。
③伝声音
幼い頃に誰もが一度は遊んだもの、糸電話がこれに当てはまります。
直径2メートルを超える綱管の水道管の中に入れてもらい、工事をしているのは100メートルくらい先ですかと聞いたら、4キロも向こうで工事をしているのだと言われ驚いたことがあります。
これは周りの材質硬度が高いものほど吸音しないので遠くまで音が届きます。
④太鼓現象
太鼓というのは撥で叩く側は皮が厚く、反対側の革は薄い。薄い皮のほうが大きく振動して大きな音がします。
胴には欅を用いる、反響するには欅のように硬いものに限り、皮を強く張ってあるものほど響きます。太鼓の音を消すには、あの胴の中に綿を詰め込めるか、皮を緩めてしまえばよいのです。
⑤伝播音
私たちが普通に聞いている、空中を伝わってくる音を指します。これも硬いものほど、より速く遠くに伝わります。
空中では毎秒340メートルですが、水中、鉄、コンクリートなどは、毎秒5キロメートルを超えているものもあります。
⑥重量床衝撃音
住まいで問題になる、子供が飛んだり跳ねたりする音です。上の階で相撲を取らないまでも、椅子を引いただけで、階下では頭を撫でられるように感じます。
この音を阻止する方法はなく、同じ柱が上下共通している以上、伝導音は消せません。
上下の空間に、なんら吸音材がなくて材質が硬ければ、階下では倍の音となって聞こえます。
⑦軽量床衝撃音
2階のフローリングをスリッパで歩く。この場合、遮音も吸音もないものであれば、階下では2~4倍の大きさで聞こえる、太鼓現象というでしょう。
⑧共振
例えば、冷蔵庫のような小さな音でも、近くにある物質が、冷蔵庫の発生する音と同様の反響をしたとき、加増されるので音が大きくなることがあります。
壁からの反射音が共鳴する場合が一番多いのです。
⑨残響音
神父様の発声が無闇に遅く、天井をぐるりと回って戻ってくることを、教会では2.5秒ほどの残響音に求められています。
コンクリート打ち放しの建物は、反響したり残響したりします。カラオケのエコーと思ってください。
音が人間の脳に与える影響と効果

耳から入った音や音楽は、音の情報を処理する、脳の側頭葉に位置する聴覚皮質へと伝わり、全身に影響を及ぼします。
聴覚皮質を活性化すると自律神経系に作用して、「セロトニン」や「オキシトシン」などの神経伝達物質が分泌され、心拍や血圧が変化し、興奮や鎮静、リラクゼーションなどの効果がもたらされます。
また、心の状態にも影響を与え、気分を改善したり、集中力を高めたり、感情、知覚、認知を活性化させることが分かっています。
生長音楽(植物における音の影響)
音や音楽が植物の生長や生理活動に与える影響について、さまざまな研究が行われています。
植物の成長促進や代謝活動の活性化を目的とした「生長音楽」は、2012年に日本農芸化学会でも発表されており、近年では音楽療法や農業技術との関わりの中で注目されています。
音楽の種類と植物への影響
植物は音の種類や周波数成分によって異なる反応を示すことがわかっています。
クラシック音楽
モーツァルトやバッハなどのクラシック音楽は、植物の成長を促進する効果があると報告されています。音楽に含まれる時間的リズムや複雑な周波数成分が刺激となり、アミラーゼ活性やたんぱく質の合成を高めると考えられています。
ロックや単調音
一方で、強い低周波や単調なリズムを持つ音楽は、植物の生長に悪影響を及ぼす可能性があるとする研究もあります。特に大音量や極端な低周波は、植物の生理活動に変動を引き起こすことがあるとされています。
ハイパーソニック効果 ~聴こえない音が与える影響~
ハイパーソニック効果とは、人間の可聴域(20Hz〜20kHz)を超える超高周波音が、生物の生理活動に影響を及ぼす現象です。
日本の研究者・大橋力氏は、クラシック音楽に含まれるハイパーソニック成分が植物に働きかけ、アミラーゼ活性やリボゾームによるたんぱく質合成を促進し、葉の展開や生育速度を高める可能性を示しました。
つまり、音楽はただ「聴くもの」ではなく、植物にとっては物理的な刺激として生長に影響を与えるものと考えられているのです。
生理的指標による評価
植物の生長や代謝に対する音の影響は、以下のような生理的な指標によって評価されます。
アミラーゼ活性の向上により、栄養吸収やエネルギー利用が効率化される。
リボゾーム活性が高まり、たんぱく質合成やアミノ酸結合の速度が変化する。
葉の展開速度や生育スピードの向上、さらには生存期間にも好影響を与える可能性がある。
これらの点において、特にクラシック音楽を用いた刺激が有効であることが複数の研究で示唆されています。
音楽刺激の条件と効果
生長音楽の効果は、音楽に含まれる周波数成分や時間的特性、音量、そして聴取方法(スピーカーの位置や距離など)といった条件によって大きく左右されます。
特にクラシック音楽や、一定の低周波刺激は、植物の成長や生存期間に良い影響を与える可能性があるとされており、今後の農業や植物栽培への応用が期待されています。
まとめ
音は、耳から脳に約0.1秒から0.2秒の速さで伝わります。心地よい音や音楽、リズムは人間(特に子供)の脳の発達をサポートする大切な要素です。
子供の感覚を刺激することは、脳の成長を促す、言葉を覚える、感情を表現する力も育てます。
リズムを感じ、音の違いを知る事は、コミュニケーション能力や社会性の発達にも繋がります。
遮音性・吸音性を重視した家づくり。
遮音性の優れた環境は気密性がカギ。サッシの性能も重要です。
吸音性を高めることで、家族間のプライバシーが守られ、それぞれの快適な暮らしを実現します。
柔らかい素材は音が伝わりにくい。断熱材セルロースファイバーは天然木質繊維で、遮音・吸音にすぐれています。
遮音性、吸音性の高い住まいは家族のコミュニケーションがよくとれ、音に対するストレスのない住環境となります。
家族の健康と幸せは、ドクターズホームがプロデュース致します。
お気軽にご相談承ります。
〈筆者プロフィール〉

長谷川仁龍
住まいのトータルコンサルタント。
株式会社ドクターズホーム代表取締役、
(一社)国際風水科学協会 副理事長
(一社)日本建築医学協会 副理事長
NPO法人日本自然素材研究開発協議会 理事シンガポール国立大学 LKY公共政策大学院地政学プログラム修了。
松永修岳大阿闍梨のもと、様々な加行を経て、伝法灌頂を授かる。
東京都吉祥寺にて前の歌舞伎座を手掛けた棟梁に大工として師事。
神社・仏閣・お茶室・一般住宅・RC造・鉄骨造・防音工事など、幅広く教えを乞う。
23歳で仁・幸夢店を設立、建築業を開始。
33歳の時余命を宣告され、真の健康住宅の必要性を感じる。
高性能・風水、建築医学、最先端の知識を活用し、住む人々が財・体・心の健康を整え、豊かな人生が歩める住まい創りのプロデュースを行う。
【主な著書】
『しあわせを育む風水健康と幸運を呼ぶ 家づくりの秘訣』
『しあわせになれる200年 健康エコエネルギーの家』
『家族が幸せになれるほんとうにいい家』
『100年長持ちするレンガ積みの家の秘密』
(以上、エール出版社)