シックハウス症候群・化学物質過敏症はどう防ぐ?〜原因と対策を医師に訊く〜
昔から「病は気」からとよく言ったものですが、今は「病は家(住環境)から」と考えられます。
シックハウス症候群、化学物質過敏症は、住まい環境が原因で発症する可能性が高いとは、多くの人は思ってもいません。
なぜ住まい環境が・・・
どうしてそうなるのか。
また、どんな住まい環境にして、どのような暮らし方をしたら改善できるのか。
シックハウス症候群、化学物質過敏症を発症した人は、お子様やご自身が様々な改善方法を試みて、長年にわたって辛い思いをされてきたことと思います。
今回はシックハウス症候群、化学物質過敏症で悩んでいる人たちのお役立ち情報になるよう、病院の先生にお話しを伺いました。
お話しを伺ったのは、呼吸器内科医師であられた、そして今は産業医として活躍している大國義弘先生です。
大國先生のインタビューの模様をお伝えします。
大國義弘先生(館山マリアクリニック)
シックハウス症候群とは?
大國先生:医者になって40年が過ぎました。
その間、呼吸器内科医としてたくさんの方を診療させていただいてきました。
ドクターズホーム:今日はお忙しい中ありがとうございます。
早速シックハウス症候群についてお聞きしますが、シックハウス症候群とはどのようなものですか?
大國先生:住宅の高断熱高気密化が進むにしたがって、建材に含まれる有害な化学物質で汚れた空気を吸い込むと目がチカチカするとか、鼻水、涙、頭痛、吐き気、めまい、喉の痛み、だるさ、湿疹などが起きる病気です。
ドクターズホーム:建材だけが住宅における健康被害の原因でしょうか?
大國先生:いいえ、家の中のハウスダスト、ほこりですね。またそのほこりから出てくるカビ、そのカビを餌として元気になるダニ、あとは化学物質ですね。防虫剤などの揮発性の有害化学物質もあります。
ドクターズホーム:日本のシックハウス症候群の患者数はどのくらいになるのでしょうか?
大國先生:統計で日本では100万人を超えると言われているそうですが、本人にも周囲にも、原因が家にあると気付かない、わからない、いわば潜在患者数でいうと1,000万人以上にもなると言われています。
ドクターズホーム:シックハウス症候群は日本ではいつ頃からあるものなのでしょうか?
大國先生:日本では1990年代の後半に、「シックハウス症候群」が国内で大きな社会問題になりました。
しかしそれは気づいていないだけで、それ以前からあっただろうと考えられます。
ドクターズホーム:シックハウスの家の特徴を教えてください。
大國先生:高気密高断熱ということで、省エネのために換気量を減らしてると空気の入れ替えが減るため、濃度が上がるいうことです。
つまり新築やリフォームなどで使われる新建材からホルムアルデヒドなどの有害物質が空中に漂ってきて、濃度が高くなり、そのため健康被害が出るという点です。
ドクターズホーム:そもそもシックハウスとはどういう意味でしょうか。
大國先生:病気の家、病気をつくる家というような意味ですね。
汚染された空気が原因で家に住む人たちが具合が悪くなる住宅のことです。
家のなかの空気が汚れる原因
ドクターズホーム:なぜ空気が汚れてるのでしょうか
大國先生:先ほどお話ししたように、いまは断熱により省エネ性能を高めるために、冬なら暖かい空気、夏なら冷たい空気が逃げないよう高気密高断熱にすることで、空気を逃さない、昔だったら隙間だらけの家で簡単にで出てってくれた有害物質が、溜まりやすくなるというのが理由です。
ドクターズホーム:その有害物質が、低い安価な新建材が床壁断熱材など様々なところに利用され、空中にまき散らされているということでしょうか。
大國先生:そうです。さらに換気がしっかりと計画的にできてない家でも、有害物質というのは溜まりやすくなります。
ドクターズホーム:その通りですね。断熱性能が低いと結露が起き、カビやダニを発生させます。
気密性能が低いと計画換気ができません。
有害化学物質や一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質、ハウスダスト、結露の原因となる水蒸気などの排出が難しくなります。
さきほどホルムアルデヒドと言われましたが、他にシックハウス症候群を起こす原因物質はありますか?
大國先生:はい。それ以外にいちばん大きいのはハウスダストです。
喘息の原因としても一番大きな要因ですけども、目に見えにくい小さなゴミ、チリ、ほこり、ダニの死骸、ダニの糞、繊維の細かいクズ、布団の綿埃、そういうものが家のほこりという意味でハウスダストと一般に言われています。
ドクターズホーム:換気が計画的にできてない家も問題とおっしゃいました。
大國先生:はい。このハウスダスト、すなわちほこりが問題になるのは、その中に含まれているダニの死骸が喘息を引き起こすアレルゲン、抗原ですね。抗原抗体反応と言ってアレルギー反応を引き起こす原因になるからなんですね。
ドクターズホーム:大國先生は建築のことにもだいぶ詳しいようですね。
新築、リノベーション、リフォームでシックハウス症候群にならないためにはどうしたらよいでしょうか?
大國先生:昔から、仁さん(ドクターズホーム長谷川)から教わったようなところも大きいです。
衝撃だったのはドクターズホームの建てた家に引っ越した方が、喘息がよくなったという例を聞いたことですね。
ドクターズホームにお願いして、そういうシックハウスの原因となる物質を使わない建築ができるということをを知ったので、多くの人がそういうことを教わって、それを実行すると、それが一番健康のためにはいいですね。
実際に私の患者さんを仁さんに紹介して、ご夫婦でモデルハウスを見学に行ったらもう気に入られて、空気にとても敏感なお二人だったようで、もう部屋に入った途端に「この家は違う」ということをお感じになられたんですよ。
その方はタバコを吸うのですが(タバコ吸うっていうところがどうも不思議なんですけど)、その部屋に入ったら吸いたいという気持ちが起きなかったそうです。
持病を持ってた奥様の体調もそのドクターズホームの部屋に入ったら、体調がよくなったと。
もう違いをその場で実感されて、驚いたのは、なんと大手メーカーに高額な手付金まで支払っていたにもかかわらず、それを捨ててまでしてドクターズホームに切り替えて、家を建てたことです。
実際に住んでどうでしたかと、外来でおいでになった時にお聞きしたら、とっても良いと、とても快適だということで、紹介したことしかしてないのに、私が感謝されてしまいました。
シックハウス症候群は治るの?
ドクターズホーム:シックハウス症候群は、病院のどちらの科で診察してもらえますか?
大國先生:シックハウス症候群の専門の科というのはちょっと思いつかないので、結局個々の症状、目の症状でしたら眼科に、鼻水でしたら耳鼻科ということで、もしかしたら総合内科というのがいいのかもしれませんが、まあこれは医者に行って、といっても結局はその他の多くの病気もそうですけども、根本的治療というのは原因の除去なんですよね。
生活習慣病の原因の除去というのは医者には結局できなくて、食べ過ぎて糖尿病になったら、食べ過ぎを治せる医者はいなくて、まあそれと一緒でですね。
その化学物質を除去する、そういうものを使わない、まあそれが一番で、そういうのが無理だったら引っ越すしかないのではなかろうかと思います。
ドクターズホーム:シックハウス症候群が起きやすい家はどのような特徴がありますか?
大國先生:結局そういう体によくない、悪い刺激性のある、体に有害な化学物質を使ってる建材で造られていると、まあそこが特徴というか問題ですね。
あとは家の中が片付いてなくて、ほこりや綿埃が目立ったり、それから二重窓になってないと、窓が汗をかくといいますが結露が発生します。それも湿気の原因ですし、家の中に湿気のせいでカビが生えるというような連鎖反応が起きますね。
ドクターズホーム:その結果、症状としては家の中にツンとした刺激臭や異臭を感じることがあります。
家の中で頭痛、目や鼻の炎症、めまい、吐き気、倦怠感など不快な症状が出る、ということでしょうか。
大國先生:はい。過敏性肺臓炎という病気も外からの刺激で起こって、その刺激がなければ治るのですが、それと同じで、シックハウスの場合も家の外や空気のきれいなところに行くと、症状が軽くなったり、消えたりするというので、家が原因かというふうに気づかれるということですね。
ドクターズホーム:シックハウス症候群の対策として引越しのお話がありましたが、他にできることはありますか?
大國先生:一番簡単なのは十分な換気で、朝のドラゴンタイムと呼ばれている日の出の前、それから午前10時くらいまでの間に、家中の窓を開けて空気の入れ替えをするといいです。
ドクターズホームで建てればそういう有害物質がありませんから、そんなことしないで済むわけですけども、もう建ててしまった方の場合だったら、例えばひとつの方法は建てて2週間は入居せずに、毎日何時間も開けっ放しにして換気すると、それでかなり、ゼロにはならないでしょうけど、だいぶ減るんじゃないかと思います。
でも、もしかしたら家によっては2週間では足らないかもしれないので、実験してみてください。
定期的に行って臭いを嗅ぐとか、自分の症状をみてみるとかして試して欲しいです。
ドクターズホームのように計画換気システムのある、高断熱高気密の家は24時間換気してるので、換気設備のフィルターの掃除というのは定期的に行うことが大事です。
ドクターズホーム:シックハウス症候群は完治しますか?
大國先生:します。引っ越せば完治しますし、あるいは原因物質がもしわかれば、それを取り除くことができればそれが一番ですね。
あるいは症状の原因の汚染された空気環境、どの部屋というのがもしあれば、その部屋から出るということで、症状を抑えられます。そういう原因から逃げるというのが一番です。
化学物質過敏症とは何か?
ドクターズホーム:化学物質過敏症というのもあると聞きます。
シックハウス症候群と化学物質過敏症の違いはなんですか?
大國先生:これはもう私今回のお話でちょっと学ばせていただいて、同じだなと私は思いました。
症状がほんとに似通ってますし、ですから一人の人が両方持ってるということもあります。
結局有害物質に対して多くの人が具合悪くなる、という場合にはシックハウス症候群でしょうし、その有害物質で普通の人だったら感じない程度のほんの微量でも感じるという場合には、それは化学物質過敏症というふうに呼ばれるんだと私は思いました。
違いを申し上げると、シックハウス症候群の場合は、家からその化学物質が出てきてる、家に入ったら症状がでるという点でそのように呼ばれているわけですね。で、化学物質の由来が家でない場合、それが微量でも反応する場合には、化学物質過敏症というふうに呼んでます。ちょっとの量でも出てくる場合に化学物質過敏症と言ってますね。
ちょうど喘息の方がちょっとのほこりで反応してしまうのに似てますね。化学物質過敏症であれば頭痛やめまい、集中力の低下などの症状が起きます。
シックハウス症候群の場合は、原因が家にある場合にそうやって名付けているということですね。
ドクターズホーム:化学物質過敏症の原因となるものはなんですか?
大國先生:結局今までのお話したのと一緒で、建物に使われている建材や家具、塗料、接着剤、そういうとこから出てくる有害化学物質や、それから家庭の殺虫剤、芳香剤、匂いの材料、それから野焼きやタバコの煙など、そういうのでも普通の人だったら問題にならないような量でも症状が出る方を化学物質過敏症と呼んでます。
それ以外には、家庭の中の衣料用の洗剤とか、柔軟剤やシャンプーやリンス、アルコール消毒剤、化粧品、香水、整髪料の中に含まれる、そういう物質も、人によってはちょっとでも有害になりえますし、多ければこれはあまり体に良くないのですけれども、そういうものが体に入って体調不良の原因になります。
症状としては目がチカチカしたり、鼻や喉が痛くなる、頭痛、吐き気、フラフラする、手足がしびれる、かゆくなる、疲れやすくなって、不整脈や呼吸器の障害が起きやすくなります。
ドクターズホーム:化学物質過敏症は増加しているのでしょうか?
大國先生:はい、増えていると言われてまして、ちょっと古い統計ですけども2017年の時点で全国で約1,000万人、12人に1人くらいですか。それくらいいると言われています。
ドクターズホーム:化学物質過敏症を治す方法、または特効薬はありますか?
大國先生:やはりこれも、さきほどのシックハウス症候群と一緒で、その方にとってはもうこれ体質改善というのもあるのかもしれませんが、結局は体質はすぐにパッとは変わりませんからね。
むしろそういう、ちょっとでも感じる体はもしかしたら、本当はそっちの人の方が健康かもしれないわけですよ。それを自分が避けようという動機付けになりますからね。
まあ治すというか、治す必要もないのかもしれないんだけど、結局症状を出さないためには原因物質を知って、それを避けるということにつきますね。
そういうシックハウス症候群や化学物質過敏症が出ないような住まいというのをぜひ実現していただいて、ほこり、カビ、湿気のない住環境、こればっかりはもうドクターズホームでも掃除しないといけませんから、当然掃除は必要ですね。そういう有害な化学物質は極力家の中に持ち込まないというのが、化学物質過敏症の場合は必要ですね。
室内の空気環境をきれいに保つ
ドクターズホーム:住まい環境が原因でアトピー、アレルギー、喘息になることはありますが、今回お話しいただきました、シックハウス症候群、化学物質過敏症の原因と共通している点は多くあります。
住まい環境、職場環境の室内の汚れた空気、カビ、ダニ、ハウスダスト、ホルムアルデヒド、有害化学物質の多い環境はよくありません。
人間が1日に体に摂取するものは83%が空気、飲み物が8%、食べ物が7%、その他2%で、全体の56%は自宅の空気です。おおよその人は約3分の2を自宅で過ごしています。その空気が汚染されていたらいつ病気が起きるとも限りませんね。
大國先生:ほんとにその通りです。
家に物が多くて、床や階段に物が置いてあって、散らかってたり換気が悪くて、有害化学物質や湿気やカビなどの嫌な臭いがする、そういう家は病気になりやすいですね。
今回は「病は家(住環境)から」をテーマに、シックハウス症候群、化学物質過敏症について、大國義弘先生にお話を伺いました。
住まい環境の問題が原因で発症する可能性が高いことが確認できました。
シックハウス症候群、化学物質過敏症は、その原因や症状も多様のため、医療機関にかかっても診断が難しい部分もあります。
可能性のあるところ、できることから対策していくことが大切になるでしょう。
ドクターズホームでは、住宅建築のプロが家づくりをトータルサポートいたします。
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